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高松高等裁判所 昭和24年(控)1017号 判決 1949年12月03日

被告人

松本武夫

主文

原判決を破棄し、本件を高松地方裁判所に差戻す。

理由

弁護人福田龜之助の控訴趣意第一点について。

原判決は事実誤認、理由不備の違法がある。被告人は靑森駅附近の辨当屋で判示金員全部の橫領の決意をして東京に向い同駅を出発したもので、この時本件橫領罪は成立し爾後の消費行爲は事後処分であるが、原判決は昭和二十四年三月七日頃より同月末日頃迄の各費消行爲を業務上橫領行爲と認めこれを一括摘示した上併合罪の規定を適用加重している。即ち原判決には單一罪に対し併合加重をしている違法があるのみならず、併合罪の判示としては理由不備の不法があるというのである。

記録を調べると本件起訴状には公訴事実として、被告人が金十万円を業務上保管中、同年三月五日頃より二十日頃迄の間東京都等において擅に自己の飮食宿泊等に費消橫領した旨の記載があり、原判決亦これと同旨の事実認定をして併合罪の規定を適用している。しかし併合罪の判示に際しては、その各個の行爲の内容を具体的に判示し、一の行爲を他の行爲より区別し得る程度に特定し少くとも各個の行爲に対し法令を適用するに妨げない程度に判示することを要するものであるから、所論の樣な事実誤認なしとするも、原判決はその理由不備であつて到底破棄を免れない。

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